商学部の銀行論Ⅱで日本銀行の倉本支店長によるゲスト講義がありました

学部

2018.01.24


 商学部・坂本正教授の銀行論Ⅱで、1月24日(水)、日本銀行熊本支店長の倉本勝也氏によるゲスト講義が行われ、学生約120名が聴講しました。

 講義では、日本銀行の業務概要の説明に加え、日本銀行が行う政策の狙いを理解してもらおうと、昨年11月にスイス・チューリッヒ大学で黒田東彦総裁が行った講演『「量的・質的金融緩和」と経済理論』と時事通信社 金融懇話会で中曽宏副総裁が行った講演『マクロプルーデンス政策の新たなフロンティア-銀行の低収益性と銀行間競争への対応-』が紹介されました。

 金融政策について、「日本銀行は物価の安定を目的として積極的に金融緩和を行いつつ、金融システムの安定も図っている」としたうえで、「長引くデフレに対抗するため、1999年にはゼロ金利政策、2001年には量的緩和政策など、当時としては先駆的な金融政策を実施したが、デフレからの脱却はできなかった。残る手段は実質金利を引き下げることで、名目金利を引き下げインフレ予想を高めてデフレを払拭したが、デフレマインドは根強く残り、物価上昇率の目標には達していない。課題は、第一に人々に根付いたデフレマインドをどのように払拭するか。第二に2%の物価安定の目標に向け、最適なイールドカーブ(利回り曲線)の形状をどのように把握するかということである」と語りました。

 また、プルーデンス政策について、「バブルの崩壊を経験することで、日本のセーフティネットは格段に整備が進んだ。金融システムの安定性を維持するには、ミクロプルーデンス(個別金融機関のリスクの把握)の視点だけでは不十分で、マクロプルーデンス(金融システム全体のリスク所在の分析・評価)の視点が重要になる。人口や企業数の減少による銀行の低収益性や競争激化により、わが国は潜在的な金融脆弱性を抱えている。地域金融機関が地域経済を支えるためにクリアするべき課題は、適正な競争環境の整備に加え、口座維持管理手数料といった金融仲介サービスの適正対価に顧客の理解を得ることだ」と話しました。

 坂本正教授は、「今、銀行はマイナス金利で銀行本来の業務がうまくいっていない。政策の大きな柱である株高で景気はいいが、それがどう財政金融にからんでくるのか。今の日本の金融政策は非常に新しい、実験的なことをしていて、支店長から実証的には長期金利は政策によって下がっていると報告された。今日は、新しい事実によって結論づけられた話を聞く貴重な機会になった」と総括しました。
 

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