第12講 貨幣の供給

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【2015年6月15日更新】


今回のねらい:

貨幣とはどのような役割を担っているのでしょうか.
どのようなものを貨幣と呼んだらよいのでしょうか.
貨幣はどのような経路を通じて世の中に出回るのでしょうか.
中央銀行(日本銀行)の役割は何でしょう.

今回のキーワード:
新しいマネーの定義,「マネーストック統計」登場
マネーサプライ
マネタリーベース
無担保コール翌日物金利
日銀当座預金残高
ゼロ金利政策
量的緩和政策

<<近年の出来事>>
2007.09.26(水) 日本郵政,スルガ銀行と住宅ローンの
業務提携協議を進めることで合意
2007.10.01(月) ★郵政民営化.ゆうちょ銀行,かんぽ生命保険,
郵便局会社,郵便事業会社の4事業会社が引き継ぐ


2007年10月の民営化後の形態

日本郵政会社(持株会社)の下に4つの会社がぶら下がる

・ゆうちょ銀行(銀行業)   
 民営化当初は政府の100%出資.
 2017年9月末までに完全売却
・かんぽ生命(生命保険業) 同上
・郵便事業会社(郵便・物流業)政府の100%出資を継続
・郵便局会社(郵便局窓口業) 政府の100%出資を継続


2007.10.04(木) 日本郵政と日本通運,宅配便や国際物流で包括提携へ


2005年10月14日(金) 郵政民営化関連法案成立.2007年10月に
日本郵政公社を民営会社に移行.2017年までに民営化
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/yuseimineika2/houan/05index.html
2005年11月11日(金) 初代「日本郵政株式会社」社長に
西川善文氏(前三井住友銀行頭取).完全民営化前倒しを明言


(注意!)----------------------
民主党政権になってから,自民党政権下で決まった郵政事業
民営化の方向は,変更される方向で検討されています.
今後の進展には注目してください.
2009.10.20(火) 日本郵政の西川善文社長(71),辞任表明
2009.10.21(水) 亀井静香郵政・金融担当相,日本郵政社長の
後任,元大蔵次官の斉藤次郎(73)東京金融取引所社長を発表
2009.10.28(水) ★日本郵政新体制スタート
会長西岡喬(三菱重工業相談役)
社長斎藤次郎 元大蔵事務次官
副社長坂篤郎 前内閣官房副長官補
高井俊成 元日本長期信用銀行常務
関根誠二郎 キャノン本部長
足立盛二郎 元郵政事業庁長官
社外取締役
奥田碩 トヨタ自動車相談役
岡村正 日本商工会議所会頭
松尾新吾 九州電力会長
小池清彦 新潟県加茂市長
石弘光 元一橋大学長
曽野綾子 作家
原田明夫 元検事総長
井上秀一 郵便局会社取締役
杉山幸一 前三菱重工業特別顧問
神野吾郎 中部ガス代表取締役
入交太郎 入交グループ本社社長
渡辺隆夫 西陣織工業組合理事長
--------------------------------

(参考)読売新聞(Yomiuri OnLine) 郵政民営化特集
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/special/65/yusei_top.htm

郵政民営化(内閣官房 郵政民営化準備室)
http://www.yuseimineika.go.jp/

貨幣の定義

■貨幣の機能
1.交換媒介機能
2.価値の貯蔵手段
3.価値尺度(計算単位)

■貨幣の定義
        流動性の観点から
  現金   当座預金  普通預金   定期性預金
------------------------------------------------------------------------------
    大きい ←  流動性  → 小さい

  

■従来の「マネーサプライ統計」の定義

M1=現金+要求払預金
M2=M1+定期性預金
M2+CD,CDは譲渡性定期預金
M3+CD=M2+CDに加えて,郵便貯金,信用組合,農協,漁協,
    労働金庫などの預金
広義流動性=M3+CDに加えて,投資信託,金融債,国債,外債,
      CP,債券現先

定義のポイントは,対象とする貨幣の種類(金融商品)と
債務者(発行主体)の2つです.

これまでは,M2+CDが代表的貨幣の定義として使われていました.

2007.10.11(木) 日銀,9月のマネーサプライ「M2+CD」の
月中平均残高は724兆1000億円,前年同月比1.7%増
2007年9月のM2+CDの平均残高は約720兆円です.
GDP(約500兆円)の約1.4倍です.
マネーサプライのデータは日本銀行のサイトで調べることができます.
http://www.boj.or.jp/type/stat/boj_stat/ms/index.htm

-------------------------------------------------

■新しいマネー統計,「マネーストック統計」

日本銀行は,2008年6月から新統計に変更
その背景は,「ゆうちょ銀行」の発足です.従来の貨幣の定義
では郵便局は政府系金融機関の扱いのため,その「貯金」は従
来の代表的な貨幣の定義M2+CDには入っていませんでした.
「ゆうちょ銀行」になり事実上民間金融機関になったため,
統計の組み換えが必要になりました.

貨幣の統計上の定義が次のように変更されました

「マネーストック統計」は次の4つの指標から構成されています.
・M1
=現金通貨+預金通貨(預金通貨の発行者は,全預金取扱機関)
・M2
=現金通貨+預金通貨+準通貨+CD(預金通貨,準通貨,
 の発行者は国内銀行等旧マネーサプライ統計のM2+CD
 対象預金取扱機関と一致.国内銀行等に限定)
・M3
=現金通貨+預金通貨+準通貨+CD(預金通貨,
 準通貨,CDの発行者は全預金取扱機関)
・広義流動性
=M3+金銭の信託+投資信託+金融債+
  銀行発行普通社債+金融機関発行CP+国債・FB+外債

上で,代表的な定義は「M3」です.

ゆうちょ銀行の「貯金」等はM1とM3の中に入りました.
M2には入っていません.ゆうちょ銀行は「国内銀行等」
の中には含まれません(注意)

旧統計のM2+CDにほぼ一致するのは新統計のM2です.

用語の補足説明
・現金通貨=銀行券発行高+貨幣流通高
・預金通貨=要求払預金(当座,普通,貯蓄,通知,別段,納税準備)
      −対象金融機関保有小切手・手形
・預金通貨の発行者は,全預金取扱機関
・準通貨=定期預金+据置貯金+定期積金+外貨預金
・CD=譲渡性預金
・国内銀行等CD,とは旧マネーサプライ統計のM2+CDの
  CD対象預金取扱機関と一致.発行者は国内銀行等
・国内銀行等=国内銀行(ゆうちょ銀行は除く)+外国銀行在日支店
   +信用金庫+信金中央金庫+農林中央金庫+商工組合中央金庫
・全預金取扱機関=国内銀行等+ゆうちょ銀行+信用組合
   +全国信用協同組合連合会+労働金庫+労働金庫連合会
   +農業協同組合+信用農業協同組合連合会+漁業協同組合
   +信用漁業協同組合連合会
・国内銀行等以外の預金取扱機関=全預金取扱機関−国内銀行等

2008.06.09(月) ★日銀,マネーサプライ統計を29年ぶりに新方式の
マネーストック統計」に変更.新M2をM2+CDの後継指標に.
新M2=(M2+CD)−証券会社や短資会社の現金・預金,非居住者預金,
ゆうちょ銀の保有現金
M2は前年同月比2.0%増の734兆3000億円
M3(現金、要求払い預金、譲渡性預金など)が前年同月比で0.7%増の1034兆円

マネーストック:
http://www.boj.or.jp/statistics/money/ms/index.htm/
マネーストックの解説
マネーストック統計の解説
マネーストック統計のFAQ

●最近の新しい動きとしては「電子マネー」があります.
熊本の「上通商店街は日本で最初の本格的な電子マネー商店街」です.
参考:国際経済学科のメールマガジン「国経館」内の以下を参照してください.
第72回 上通商店街と電子マネーEdy(エディ)

電子マネー「Edy」(全日空)   基本技術はソニーのFelica

電子マネー「Suica」(JR東日本)  同 上

pasmo(関東の私鉄,バス)

スゴカ(JR九州)

貨幣供給のメカニズム[top]

どのような経路で経済全体に貨幣が供給されていくかを理解するには,
1つには中央銀行のバランスシートを理解すること,もう1つは銀行
組織による信用創造を理解することが重要です.

     貨幣供給のメカニズム

     中央銀行のバランスシート
 

マネタリーベース
概念上では中央銀行の負債項目,あるいは中央銀行が供給する通貨
のこと,具体的には,

マネタリーベース = 流通現金 + 日銀当座預金
                 (中央銀行預け金)

ポイントは,中央銀行の政策に対応してマネタリーベース
(ベースマネーとかハイパワードマネーともいいます)が増減
することを理解することです.

日本銀行は,無担保コール翌日物金利政策金利として
使っています.
無担保コール翌日物金利の動きをみながら,公開市場操作により,
マネタリーベースを増やしたり減らしたりします.
無担保コール翌日物金利の目標値を設定し,これを超える場合は
買いオペでマネタリーベースを増やし(金融緩和),
これを下回る場合は売りオペでマネタリーベースを減らし
金融引き締め)て,金利水準を維持します.

マネタリーベースの値(2007年9月)は,約88兆です.
量的緩和解除後,日銀はマネタリーベースの値を減らしています.
2007.10.02(火) 日銀,9月のマネタリーベース87兆5728億円
(参照)日銀のマネタリーベースコーナー
http://www.boj.or.jp/type/stat/boj_stat/mb/index.htm

例:買いオペ(公開市場操作: open market operation)
民間保有の債券を中央銀行が購入→中央銀行の資産は増加→
同時に債券購入代金として貨幣が民間に供給(日銀当座預金の増加)
→マネタリーベースの増加

買いオペの反対が売りオペ

(重要:最近の出来事)
●日銀は,1999年2月12日から2000年8月11日までゼロ金利政策
 
を実施(8月11日に解除決定)
●日銀は,2001年3月19日から2006年3月9日まで量的緩和政策
 実施.
●日銀は,2006年7月14日にゼロ金利政策を解除しました.
●日銀は,2009年12月1日広い意味での量的緩和政策を実施しました.
●日銀は,2010年10月5日(火) 「ゼロ金利政策」を復活。
         白川方明総裁は「包括緩和」と命名


金利を低く抑えるにしろ,金融の量的緩和を実施するにせよ,
日本銀行は買いオペ等により,民間銀行が日銀内に保有する
「日銀当座預金」を増加させ,結果的にマネタリーベースが拡大します.

ゼロ金利政策の場合は,政策目標としてコールレート
(正確には,無担保コール翌日物金利)を設定.
量的緩和政策の場合は,日銀当座預金残高を目標に設定します.

ゼロ金利政策と量的緩和については,私のメールマガジンを
参照してください.

第16回 ゼロ金利政策

第32回 量的金融緩和

銀行の信用創造[top]

銀行に預けられた当初の預金は,銀行組織をめぐることにより
乗数倍に膨らみます.これが預金の自己増殖作用です.財市場
の分析ですでに学んだ乗数効果と類似の概念であることに気づ
けばわかりやすくなるでしょう.

   信用創造の図解
 

1.最初にA銀行に100万円の預金
準備率を10%と仮定しているので,A銀行が貸付けに向ける
ことができるのは100万のうちの9割.
2.上で貸付けを受けた人がそれをB銀行に預金したとします.
B銀行は預金のうち9割を貸出にまわすことができます.
以下,同じような繰り返しが行われるとすると,銀行組織が
創出する預金の総額は,無限等比数列の考え方を使って,
(注:無限等比数列の和=初項/(1−公比)

100 + 100 (1-0.1) + 100 (1-0.1) ^2 + 100 (1-0.1) ^3 +
 ... + 100 (1-0.1) ^n

= 100 (1 + (1-0.1) + (1-0.1) ^2 + (1-0.1) ^3 + ... (1-0.1) ^n +..)

= 100 ( 1 / 1 - (1 - 0.1) ) = 100 / 0.1 = 1000

結局,次のようになります.

銀行組織全体での預金増加 = 最初の預金/預金準備率

この例では,最初の100万円は,最終的には1000万円の預金総額
に膨れ上がります.銀行組織として900万円(1000−最初の100)
貸出増加として「信用創造」されました.

【信用創造はセンター試験にも出ていた】
銀行の信用創造は,2005年1月16日に実施された「平成17年度
センター試験」の「政治・経済」(第6問の問3)の中でも出題
されていました.高校でも教えているのですね.
問題をかいつまんで紹介しておきましょう.

(問題の要約)「銀行Aは5000万円の預金を最初に受け入れる.
支払準備率は10%.このとき信用創造で創り出される銀行全体の
貸出金の増加額を求めよ」

(参照)
独立行政法人大学入試センター 平成17年度センター試験 政治・経済
http://www.dnc.ac.jp/center_exam/17exam/mondai_pdf/17seikei_q.pdf

調べてみたら高校の教科書(『高校 政治・経済』(実教出版,
2004年)117ページ,欄外)に計算結果だけが載っていました.
これだけでは全く理解できない内容です.センター試験は教科書
だけを学べばよいというはずなのですが,どうも建前だけのようです.

信用乗数の理論[top]

マネタリーベースと銀行の信用創造を合体させれば,経済全体
の貨幣供給プロセスを説明することができます.中央銀行は,
マネタリーベースをコントロールすることによって経済全体の
貨幣供給量を調節することができると言われています.

記号の説明:
M:貨幣供給量(マネーサプライ).「銀行以外の民間経済主体
  が保有する現金と預金の総和」
CA:金融機関を除く民間(家計,企業)の保有する現金
D :民間の銀行に預けた預金
R:中央銀行預け金と金融機関の保有する現金(準備金)
H:マネタリーベース(ハイパワードマネー)
α:非銀行民間部門の現金と預金の保有比率(CA/D)
β:準備金Rと預金Dの比率(R/D).準備率

貨幣供給量の定義  M = CA + D   (1)
マネタリーベース  H = R + CA   (2)

(1)式を(2)式でわると,
    
右辺の分母子をDでわると,

    


(3)式の右辺の係数を信用乗数(あるいは貨幣乗数)と呼びます.
準備金は預金より小さいのでβ<1です.
マネタリーベース(H)1単位の増加は信用乗数倍の貨幣供給量(M)
の増加をもたらします.
準備率の増加は,銀行の貸出を抑制するので貨幣供給量を減少
させます.

マネタリーベースとマネーサプライの間には信用乗数を介した上
のような関係がありますが,マネタリーベースを増やせばマネー
サプライが自動的に増えるかというと必ずしもそうではありません.
日本銀行が日銀当座預金残高を増やして,銀行に貸し出しを増やす
よう環境を整備したとしても,不良債権問題を抱えている銀行が
企業への貸し出しに慎重になっている場合は,上の信用創造機能
が十分働かずマネーサプライは増加しません.

2003年5月時点の信用乗数は約6.7で,2008年で約8前後です
(内閣府『日本経済2009-2010』)

講義ノート付録の次のグラフと関連統計を参照してください.

マネーサプライとベースマネーの伸び率(グラフ)

信用乗数(グラフ)

・2006.11.09(木) 日銀、10月のマネーサプライ、M2+CDの
    月中平均残高は710兆2000億円、前年同月比0.7%増

・2006.10.03(火) 日銀,9月のマネタリーベース86兆9660億円,
    前年同月比21.2%減

・2002.05.02 日銀,4月のマネタリーベース,前年同月比
    36.3%増の91兆393億円,74年1月以来の高い伸び

・2002.05.10 日銀,4月のM2+CD伸び率前年同月比3.6%増
    要求払い預金の伸び38.2%

関連新聞記事[top]

○典型的なマネーサプライの新聞記事の例
「日銀が9日に発表した10月の通貨供給量(マネーサプライ)は,
代表的な指標の「M2+CD(現金,要求払い預金,譲渡性預金など)」
が前年同月比2.1%増加した.伸び率は9月より0.1ポイント拡大.
2%台の伸び率が2カ月続き,マネーの伸びが少しずつ拡大している・」
(日経新聞 夕刊 2004年11月9日 抜粋)

○「お金,使われる頻度低下,1-3月「流通速度」最低水準の0.73」
『日本経済新聞』2003年6月15日,3ページ
貨幣乗数も6.8に低下していることを指摘しています.

○「財投資金,国債で調達」『日本経済新聞』1999年7月9日
「財投の必要資金とは無関係に郵便貯金と年金資金が自動的に入る
預託制度を2001年4月に廃止するのに伴い,国債の一種として
「財投債」を発行,主力の調達手段とする」

○「CD3カ月物,発行相次ぐ」『日本経済新聞』1999年7月9日
「都市銀行が短期金融市場で,相次いで譲渡性預金(CD)を発行した.
主力の3カ月物が発行されるのは6月上旬以来」

○「マネー収縮一段と」『日本経済新聞』1998年5月20日
「金融機関が融資を通じて経済活動に必要なお金を生み出す信用創造力
信用乗数)の低下が続いている.日銀の通貨供給量統計をもとに
はじいた信用乗数は4月に11.5と80年前後の水準まで低下した.
貸し出し低迷がマネーの収縮を招き,景気をさらに悪くする悪循環に
陥りかねない状態になっていることを示している.」

○「通貨供給量3.5%増.4月伸び率大幅に鈍化」
『日本経済新聞』1998年5月20日
「日銀は19日,4月の通貨供給量を発表した.代表的な指標である
M2+CDの前年同月比伸び率は前月より1.0ポイント低い3.5%となった.
伸び率の落ち込み幅は91年4月以来,7年ぶりの大きさで,経済活動
の縮小がマネーサプライの面からも裏付けられた.」

ビッグバン関連[top]

■金融ビッグバンとは

日本版金融ビッグバンのねらい
2001年までに日本の金融市場がニューヨーク,ロンドン並みの
国際金融市場として復権することを目標として金融システム改革
を行うというのが当初の狙い.
1986年の英国のビッグバンを倣って1998年からスタート.
ペイオフ解禁は1年遅れて02年4月にずれこんだ.

銀行,証券,保険業界を中心に 改革の3原則
Free(市場原理が働く自由な市場に)
   〜参入・商品・価格等の自由化
Fair(透明で信頼できる市場に)
   〜ルールの明確化・透明化、投資家保護
Global(国際的で時代を先取りする市場に)
   〜グローバル化に対応した法制度,会計制度,監督体制の整備

○銀行,証券,保険の間の垣根がなくなる
○内外の金融機関の間での競争あるいは提携が活発化
異業種からの銀行業への参入
IYバンク銀行 2001.05.07 IYバンク銀行開業
ソニー銀行 2001.04.02 ソニー銀行発足.6月開業

場合によっては,「ウインブルドン現象」が支配するかも.
日本の金融市場が外国の企業によって席捲されてしまう.

■ビッグバン関連年表

1997.06.11 改正日銀法が成立
1998.03.31 山一証券閉鎖
1998.04.01 改正外為法施行
1998.06.01 日興証券,米トラベラーズと提携.
      トラベラーズ2200億円出資,事実上日興を傘下に
1998.06.19 銀行によるCP発行解禁
 CPは信用力のある企業が短期資金調達のために無担保で発行する約束手形
1998.06.21 金融監督庁発足
1998.07.01 メリルリンチ日本証券の第1号店開業(長野)
1998.07.15 三井信託,米プルデンシャル(最大手生命保険)と
     98年秋をメドに合弁で投信信託委託会社設立
1998.07.16 ビザインターナショナル等,渋谷で大規模な電子マネーの実験開始
1998.08.01 野村証券,外為業務に進出
1998.09.30 第一勧銀・JPモルガン提携で合意.年内に投信合弁
1998.10.02 ソフトバンク,大沢証券を買収,年内にも営業開始
1998.10.29 三井信託,海外から撤退.自己資本国内基準行に
1998.10.30 富士銀行・第一勧銀が提携
2001年ビッグバン完成目指す

■メガバンク誕生

最近の金融再編の系図(3大グループ)
●三菱UFJフィナンシャルグループ(2005年10月1日発足)
総資産190兆円
○三菱東京銀行グループ
 東京三菱銀行,三菱信託銀行,日本信託銀行
 東京海上火災・日動火災・朝日生命(経営統合),日新火災

○UFJ(United Financial of Japan)グループ
 三和銀行,東海銀行,東洋信託銀行
 日本火災と興亜火災は合併へ,
 大同生命と太陽生命は経営統合

●みずほフィナンシャルグループ(総資産150兆円)
 日本興業銀行,第一勧銀,富士銀行
 安田火災・大成火災・日産火災(経営統合)
 第一生命(安田火災と提携),富国生命と安田生命の提携

●三井住友グループ(総資産140兆円)
 住友銀行,三井銀行
 住友海上・三井海上は合併へ,
 住友生命,三井生命

+りそな(大和,あさひ銀行グループ)
2001.09.07 あさひ銀行と大和銀行,2002年度に金融持株会社を設立

(参考)日本長期信用銀行 → 新生銀行
    日本債券信用銀行 → あおぞら銀行

●現在の6大金融・銀行グループとは
三菱UFJフィナンシャルグループ
みずほフィナンシャルグループ
三井住友グループ
りそな
三井トラスト
住友信託銀行

●これまでの破たん生命保険会社
1997.04.25 日産生命
1999.06.04 東邦生命
2000.05.31 第百生命
2000.08.28 大正生命
2000.10.09 千代田生命破たん
2000.10.20 協栄生命破たん
2001.03.23 東京生命破綻
2001.01.19 2000年5月破綻の第百生命の受け皿,カナダ系の
      マニュライフ・センチュリー生命保険
2001.01.23 ソフトバンクと大和生命,2000年8月に破綻した大正生命の受け皿に
2001.01.23 英プルデンシャル,オリコ生命を230億円で買収
2001.02.03 2000年10月破綻の千代田生命,米AIGに譲渡へ
2001.02.23 破綻した千代田生命,米AIGとスポンサー契約.
      新会社名「エイアイジー・スター生命保険」
2001.02.23 2000年8月破綻した大正生命,大和生命と
    ソフトバンク・ファイナンスが受け皿に.新会社「あざみ生命」
2001.03.23 東京生命,更正特例法の適用を東京地裁に申請し破綻.
      負債総額9800億円.生保としては戦後7社目
2001.04.03 破綻した協栄生命,米プルデンシャルグループの傘下で
     「ジブラルタ生命」として再出発
2001.06.26 3月に破綻した東京生命の受け皿,太陽と大同生命グループへ
2001.11.13 朝日生命,営業部門を東京海上の子会社に譲渡.
     03年3月に東京海上(ミレア保険グループ)と統合へ
2003.06.26(木) 米保険大手AIG,GEエジソン生命保険を9月末までに買収すると発表.
AIGはすでにアリコ・ジャパン,AIGスター生命保険(旧千代田生命保険)を所有.
 生保収入国内6位へ

●日本版金融ビッグバンについては,この講義ノートの
第1講イントロダクション」の中の1998年4月の話題も
参照してください.

【改正外為法関連新聞記事】

【改正日銀法関連新聞記事】
○「日銀の独立性明確に:改正法成立,蔵相の命令権廃止」日経夕刊1997年6月11日
○「改正日銀法でこう変わる」日経夕刊1997年6月11日
○「改正日銀法が成立」日経朝刊1997年6月12日
○「日銀の「独立性」は透明な政策決定で」(社説)日経朝刊1997年6月12日
○「改正日銀法成立,政策目標わかりやすく」日経朝刊1997年6月12日
○「日銀と政府・国会・国民との関係」日経朝刊1997年6月12日
○「独立性強化,カギ握る政策委」日経朝刊1997年6月12日
○「秋にも議事録要旨公開,松下総裁」日経朝刊1997年6月12日

【インターネットHP情報】
最近の金融関係の重要な話題の1つといえば「日本版ビッグバン」です.
金融市場の自由化,開放の大改革の動きをこのように呼んでいます.
ビッグバン関連の情報を得るには,まずは財務省のホームページに
アクセスすることです.

大蔵省/日本版金融ビッグバンとは:

  http://www.fsa.go.jp/p_mof/big-bang/bb1.htm

この中に,「日本版ビッグバンとは」をはじめとして多くの
資料(約400K)が収められています.

【日本版ビッグバン関連新聞記事】
○「証券市場改革99年完了,株式手数料を完全自由化,証取審が最終報告」
  日経夕刊1997年6月13日
○「証券市場改革の骨子」日経夕刊1997年6月13日
○「日本版ビッグバンのスケジュール」日経朝刊1997年6月14日
○「金融持ち株会社98年解禁」日経朝刊1997年6月14日
○「証券取引審議会,金融制度調査会,保険審議会の報告書の要旨」
  日経朝刊1997年6月14日
○「ビッグバン5つのポイント」日経朝刊1997年6月14日
○「金融ビッグバンへの期待と課題」(社説)日経朝刊1997年6月14日
○蝋山昌一「ビッグバンと経済改革の行方」日本経済新聞
 『やさしい経済学』1997年6月23日から9回(7月3日).
(注)著者は証券取引審議会の総合部会の座長として
「証券市場の総合的改革ー豊かで多様な21世紀の実現のためにー」をとりまとめた.
○池尾和人「ビッグバンと公的金融改革」日本経済新聞
『やさしい経済学』1997年7月21日から回

クイズその8
現在日本に流通している貨幣はどのくらいあるでしょうか.
調べてみましょう.
(参考)実質GDPは約500兆円でした.

クイズの答え

メールマガジン[top]

マネーサプライやマネタリーベースの定義,および日銀による
「ゼロ金利政策」や「量的緩和政策」,生命保険会社の
ソルベンシーマージン比率,ペイオフ解禁については,
私のメールマガジンも参照してください.

第13回 マネーサプライ

第16回 ゼロ金利政策

第29回 公定歩合

第32回 量的金融緩和

第35回 ソルベンシーマージン比率

第43回 ペイオフ解禁

マネーサプライのデータ[top]

マネーサプライ(マネーストック統計)のデータは,日本銀行の
ホームページにあります.
テキストデータで提供されているので,ダウンロード後にエクセル
のファイルに変換しておくとよいでしょう.

時系列統計データ検索サイト:
http://www.stat-search.boj.or.jp/index.html

主要時系列統計データ表(月次):
http://www.stat-search.boj.or.jp/ssi/mtshtml/m.html
マネーストック統計、マネタリーベース、コールレート、
為替相場(円ドル)、企業物価指数、国際収支など

主要時系列統計データ表(四半期):
http://www.stat-search.boj.or.jp/ssi/mtshtml/q.html
日銀短観(業況判断)、家計金融資産

主要時系列統計データ表(年度):
http://www.stat-search.boj.or.jp/ssi/mtshtml/fy.html
日銀短観(設備投資、経常利益)

主要時系列統計データ表(日次):
http://www.stat-search.boj.or.jp/ssi/mtshtml/d.html
コールレート、為替相場(円ドル)

主要時系列統計データ表(週次):
http://www.stat-search.boj.or.jp/ssi/mtshtml/w1.html
定期預金、普通預金平均利率

ネット関連論文[top]

日本銀行調査月報 2002年8月2日
「最近のマネタリーベースの増加をどう理解するか?」(要約)

pdfファイル(論文)

ケータイ問題[top]

【問題1】2008年から新しく導入された
「マネーストック統計」の貨幣の定義でないのははどれ?
1 M1
2 M2
3 M2+CD

【問題2】マネタリーベースの説明で誤りはどれ?
1 中央銀行の負債項目の合計がマネタリーベース
2 中央銀行の資産項目の合計がマネタリーベース
3 流通現金と中央銀行預け金の合計がマネタリーベース

【問題3】銀行Aは最初に1億円の預金を受け入れる.
支払準備率は10%とする.このとき信用創造で創り出される
銀行全体の貸出金の増加額はいくらになるか.
1 10億円
2  9億円
3  8億円

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(c) Shigeru Sasayama, Kumamoto Gakuen University