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熊学人物伝vol.11 九州山地をフィールドにエコツーリズムの魅力を発信 ECO九州ツーリスト合同会社代表 寺崎 彰さん

昭和56年3月 熊本商科大学(現 熊本学園大学)経済学部卒業 
プロフィール 昭和33年、旧蘇陽町生まれ。昭和51年3月熊本商科大学付属高等学校卒業。昭和57年2月蘇陽町役場入庁、平成15年企画観光課長、平成17年市町村合併により山都町企画振興課長、平成20年3月依願退職。同年6月ECO九州ツーリスト合同会社を設立。九州ハイランド観光ガイドインストラクター協会会長。山都町観光協会理事。森林保全巡視員。山都町商工会会員。福岡大学非常勤講師。

豊かな自然に抱かれた青い山並み連なる故郷

 どこまでも続く眩いばかりの銀世界。梢を白く氷結させた樹氷の森に歩を進めれば、その先に待つのは雲一つない青空と阿蘇やくじゅうの大パノラマ。雪山登山と聞けば、上級者の独壇場のようにも思えるが、意外なことにスキー場のリフトを使って登ることで、誰でも気軽にスノーハイクが楽しめるとか。
 今回登場する寺崎彰さんは、50歳を機に公務員を退職し、九州中央山地をフィールドに、地域の魅力を発信するべく旅行会社を興した案内人だ。山都町役場の企画振興課長から、『ECO九州ツーリスト合同会社』の代表へ。その原動力は、どこから生まれてきたのであろうか。
 寺崎さんの地元は旧蘇陽町(現山都町)の馬見原で、肥後と日向を結ぶ旧藩時代の交易ルート、日向往還の宿場町として栄えたところだ。ここから高千穂へ向かう道中は、かつて放浪の歌人、種田山頭火がこの地で詠んだ「分け入っても分け入っても青い山」が幾重にも連なる山塊の地である。
 地元の中学を卒業後、熊本商科大学(現熊本学園大学)付属高等学校を経て本学の経済学部へ進んだ寺崎さんは、持ち前の好奇心とフットワークの良さで、ホテルや測量、役場など、卒業までになんと30ものアルバイトを経験。
 「それで4年で卒業できなかったのだから、決して褒められた学生じゃなかったんです。その5年次も週に5日は蘇陽町役場のアルバイトで、当時はまだインターンシップの制度はなかったけれど、それが縁で職員に採用されたようなものでした」と寺崎さん。

200年前の古地図に魅了され公務員から一転、案内人に

 役場に入庁したのは、自治体にオフィスコンピュータが導入され始めた頃のこと。それから15年に渡って、主に税務や財務分野で電算化に取り組んだ。大学の講義で最先端の仕組みを学び、アルバイト時代に実践する機会を得ていたことが役立った。
 次に配属されたのが企画観光課(市町村合併後は山都町企画振興課)で、そよ風パークをはじめ、地域づくりに奮闘した。折しも、観光や地域振興に対する考え方が、従来のツアー会社による発地型観光から、観光地が地元ならではの体験プログラムを提案する着地型へと変わる時期。担当者にも企画力や運営スキルが求められた。
 「その頃、偶然目にしたのが200年前の古地図『九州九ヶ国之絵図』でした。地図に描かれた九州中央山地国定公園は、そこだけが緑に塗られた未踏の地で、『此トコロ山深クシテ境目知レス』と但し書きまでされている。阿蘇やくじゅうは測量できたのに、地元の山だけは秘境なんです。これはまさに宝の地図だ!」そう思うと寝ても覚めてもそのことが頭から離れなくなった寺崎さん。「地元にガイドがいないのなら自分がなろう」と、何はさておき地域おこしの第一歩を踏み出すべく、旅行業務取扱管理者の資格を取得した。
 その翌年には役場を辞めて、山を知り、人を知ろうと、1年かけて地域をくまなく歩いて回った。どこで、誰に、何を頼めば魅力ある体験プログラムができるのかを知るためだ。そして、平成20年。自然や歴史、文化など、地域固有の資源を保護しながら観光に生かし、地域の振興を図るエコツーリズム推進法を追い風に、同社が誕生した。

圧倒的な自然の前では人間は無力でちっぽけな存在

 1739mの国見岳を主峰に、1600m級の山々が連なる原始の森を歩けば、西日本最大級のブナ林が紅葉する色彩の豊かさに圧倒され、また、民俗学者柳田国男を魅了した日本四大秘境の一つ、椎葉村を訪ねれば、平家落人の伝説息づく山の暮らしや夜神楽が、畏れや敬いの心を育む。
 寺崎さんはその魅力を、「圧倒的な自然の前では、人間は本当に無力でちっぽけな存在なんです。でも、それを知ると日々の悩みも取るに足りないことに思え、気持ちがとても楽になる。未知の体験は価値観を一変し、視野を広げて心を豊かにしてくれる」と語る。
 人が自然や神々と共にあり、悠久の時を刻む太古の森。ストレス社会に生きる私たちは、文明社会では得ることのできないスピリチュアルな世界、人知の及ばぬ神の領域の存在を知り、そこに深い感動と安らぎを覚えるのだ。
 今日もまた寺崎さんは、九州脊梁山地の尾根の何処かで、自然への畏怖と感謝の思いを胸に、人々を山塊の秘境へと誘う。

  • ①文化十年に製版された『九州九ヶ国之絵図』の複製。寺崎さんを秘境探索へ駆り立てた、まさに人生を変えた宝の地図だ

  • ②圧倒的な色彩を放つ、九州脊梁山地の紅葉。自然林だからこその光景だ