卒業生

クマガクフォーカス KUMAGAKU
FOCUS

経済学の学びをいかし活躍する
データサイエンティスト

Bellefolio合同会社 CEO・データサイエンティスト

増田 有一郎さん

Masuda Yuichiro

クマガク人物伝

2015(平成27)年3月
経済学部 経済学科 卒業
2017(平成29)年3月
大学院経済学研究科 経済学専攻
修士課程 修了

1989(平成元)年5月、熊本市生まれ。済々黌高等学校出身。防衛大学校理工学専攻へ進学するも、喘息を発症して帰熊。2011(平成23)年4月に経済学科へ入学し、その後大学院に進学する。卒業後は半導体商社へ就職。ベンチャー企業やEC会社でデータサイエンティストとして活躍した後、2023(令和5)年にBellefolio合同会社を起業。

世の中に貢献するために
必要と考えたのが「経済」の力

 「ビッグデータ」や「AI解析」などの言葉が多く聞かれるようになった現代。さまざまな業界で、それらのデータを分析・解析し経営や営業にいかす「データサイエンティスト」の存在感が高まっている。そんな時代の潮流のなかで、データサイエンスを武器とするBellefolio(ベルフォリオ)合同会社を起業したのが、本学大学院修士課程修了生の増田有一郎さんだ。子どものころからピアノを習い、野球に興じ、中学時代にはプログラミングを学び、高校時代には生徒会や應援團、軽音楽部の活動に熱中するなど、多方面で活発な少年だったという増田さん。ある挫折をきっかけに熊本学園大学をめざすのだが、今の彼のデータサイエンティストとしての仕事には、それまでの経験を愚直に積み上げてきた成果のすべてが詰まっている。

 父親が自衛官だったこともあり、自身も同じ道を歩むべく、高校卒業後に防衛大学校へと進学。しかし、訓練期間中に喘息を発症してしまい、自衛官への道を断念。熊本県内での大学進学を模索することになったが、当時は、リーマンショックの影響などで経済が低迷していた時代。自身で投資などはしていたものの、「自分はまだ経済について何もわかっていない」と感じてクマガクの経済学科を受験した。他大学にも合格し、進学先を検討しているときに起こったのが東日本大震災だった。その甚大な被害を目の当たりにし、「経済学を学び社会に貢献したい」という使命感が生まれたことから、クマガクへの進学を決意した。

経済学の学びに熱中し、
博士課程まで進学

 「高校時代にいろんな活動に熱中した代わりに、勉強にちゃんと取り組めていなかったという後悔があった」という増田さん。そのため、大学では勉学に集中した。特に印象に残っているのが、坂上ゼミで知った「マッチング理論」。ノーベル経済学賞を受賞した「人間は無意識のうちに合理的に考えてマッチングしている」という理論に感激し、数学が得意だった増田さんにとって、それがやりがいのある研究テーマとなった。熊本地震前後のレジの記録を解析して経済の動きを見る研究では、経済モデリングの手法を学び、「自身が体感している経済の動きを簡素化・数値化して見える化する」ことの楽しさを知る日々。もっと研究を深めたいと大学院へ進学し、数理経済学を専攻した。「文系大学なのに、情報教育が手厚かったことも、今にいきていますね」と振り返る。在学中、情報系科目のアシスタント業務を約6年務め、プログラミング(Python/R)や情報理論などの幅広い情報系科目を間接的に受講できる環境だったという。勉強に熱中した結果、学部時代には学費免除、そして院では奨学金返還免除になるほどの成績を挙げた。大学で所属したグリーンフィルハーモニックオーケストラや、自治会での活動など、勉学以外でも充実した毎日を送り、さまざまなことを磨き上げながら、増田さんは社会へと飛び出していく。

情報技術とデータ分析の力
両方をいかし活躍する

 大学院生時代に取り組んでいた経済データ分析について、実務での実践を試してみたいとの思いから、福岡にあるAIベンチャー企業でのインターンシップに参加し、機械学習エンジニアとして経験を積んだ。半導体商社への就職を経て、ベンチャー企業「Hmcomm」では、養豚場において音で豚の疾病検知をするというシステム開発にも携わった。昔から音楽を通して「音」に触れていた増田さんにとって、親和性の高い開発内容でもあった。その後、データサイエンティストとしてベンチャー企業や大手ファッション系EC会社で活躍する。データサイエンティストは、AIの機械学習の実装や、モデリングなどの技術職の面が強い機械学習エンジニアに似てはいるが、さらにそこからデータ分析や、その結果から読み取れる課題、そしてその解決法を導き出し、資料を作って提案するなどコンサルタントとしての要素も加わってくる。増田さんは独自の感性や発想力、提案力も発揮しながら各社でキャリアを積み、ついに2023年に独立することになる。

AI技術で効率性を高め
もっと世の中を元気に

 Bellefolio合同会社を立ち上げた増田さんは、データサイエンティストとして忙しい日々を過ごしている。企業などから課題をヒアリングし、必要なデータをもらい、分析して解決方法を提案したり、AIなどの機能を使ったモデルを開発・実装したりといった業務を行っている。「ECサイトのレコメンド表示機能を実装したり、ドローンを扱う企業に屋根の表面積を自動計算するようなシステムを提供したり、本当に分野は幅広いんです」と話す増田さん。それぞれの分野について専門的な知見を持たないと難しそうだが、その土台には、大学時代に身につけたという情報系スキルに加えて「マクロ経済学やミクロ経済学で学んだ経済モデリングの知識がとてもいきている」と語る。データサイエンティストの業務内容だけを聞くと『理系の仕事』のように思いがちだが、増田さんの姿を見ると、文理融合した知識・技術・感性が合わさってこそ活躍できる分野なのだと知ることができる。さまざまな提案を行うことでもっと世の中を元気に、ハッピーにしたいということが、仕事の信念。今後は、生成AIなどを使ったアプリの自社開発にも挑戦したいという。「自分がそうだったように、大学での過ごし方は人生のターニングポイントの一つになるはず。存分に学び、遊んで、興味・感心があるものにはまず触れてみることが大事」と、クマガク生にメッセージを送った。

(2024年1月取材)

Memorial photo

学部の卒業式。勉強に熱中しつつもさまざまな活動を楽しみ、充実した日々だった

(独)日本学生支援機構(JASSO)奨学金返還免除認定証。大学院で頑張った証であり、勲章

学部4年生の時には、経済学検定試験(ERE)成績優秀者として表彰を受けた

銀杏並木462号

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