卒業生

クマガクフォーカス KUMAGAKU
FOCUS

測量分野での功績を評価され
黄綬褒章を受章

株式会社ARIAKE 代表取締役社長

藤本 祐二さん

Fujimoto Yuji

クマガク人物伝

1983(昭和58)年3月
商学部 第一部商学科 卒業

1959(昭和34)年12月、玉名市生まれ。玉名高等学校出身。大学卒業後は税理士事務所、会計事務所に勤務した後、九州測量専門学校 測量科へ入学。卒業後、株式会社有明測量開発社(現・株式会社ARIAKE)へ入社する。1999(平成11)年に取締役、2001(平成13)年に代表取締役社長に就任。(一社)熊本県測量設計コンサルタンツ協会会長、(一社)全国測量設計業協会連合会副会長、同連合会九州地区協議会会長ほか。趣味はゴルフ。

熊本における測量設計業の
トップを走る企業の代表

 長年にわたって、その道ひと筋に打ち込んできた人などに贈られる「春の褒章」。2023(令和5)年春の黄綬褒章は、熊本県から5名が受章した。その一人が、本学商学部第一部商学科の卒業生である、株式会社ARIAKE代表取締役社長の藤本祐二さんだ。測量設計業における業務精励とその功績が評価されての受章となった。「いただいた仕事を一つずつ丁寧に頑張ってきただけです」と受章の感想を控えめに語るが、測量分野における熊本での存在感は大きい。道路や橋梁、ダムなどの公共事業の測量・設計をはじめ、熊本では対応できる会社が少ない文化財調査も請け負っている。同社の幅広い実績を導き支えてきた藤本さんの経営観の源は、大学時代から培ってきた会計や経済への知識や考え方にあった。

「大学で学ぶ」ことの
楽しさは計り知れない

 子どものころから料理が好きで、調理師になることを志していたという藤本さん。一度は調理専門学校へと進学するも、「大学で学ぶ」ということへの憧れが高まり、受験のため1年間の準備期間を経て本学の商学部第一部商学科へと入学するに至った。「大学時代はフリスビーサークルに所属していました。学内や公園などに集まって、フライングディスクで遊んだり、たまに競技大会にも出たりするようなフランクなサークルでした。ただ集まって遊ぶだけでも、楽しかったですね」とキャンパスライフを振り返る。簿記など会計の基礎にも大学で初めて触れた。最初は用語も帳簿のつけ方もさっぱり分からなかったが、興味を持って一つずつ地道に知識や技術を身につけていったという。「ゼミでは梅村先生というユニークな先生が指導してくださいました。『経済を知るために、株をやりなさい』と教えてくれるなど、経済に関する新しい視野を与えてくれた先生でしたね。ゼミメンバーで別府へ卒業旅行に行ったのも良い思い出です」。憧れていた大学生活を謳歌した日々だった。

就職でさらに究めた
「数字を見る」力

 在学中に会計分野の知識に触れていたことから、卒業後は親族の勧めで税理士事務所へ就職し、その後会計事務所へと転職した藤本さん。持ち前の几帳面な性格から、会計の仕事は「自分に向いている」と感じたという。「取引先は中小企業がほとんど。なかには赤字経営で苦しい会社もあって、その社長さんと一緒に、どうすれば業績が上がるのかを考えたり、提案したりすることに、大きなやりがいを感じていました」。ここは出費を抑えられる、ここはもっと投資すべき、漠然とした理想ではなく具体的な目標設定が必要など、数字をしっかり見たうえで提案した。そのような仕事を行ううちに、藤本さんは自ずと経営観の礎を築いていった。両事務所合わせて4年ほどの勤務だったが、クライアントにも事務所の職員にもかわいがられ、密度の濃い日々だったという。

熊本から全国、世界へ
業務はより広く、高く

 その後、奥様のお父様が営む測量会社へと入社することをめざし、専門知識・資格を得るために九州測量専門学校測量科へ入学する。「測量」という未知の分野だったが、高校の数学で学んだことがピタリとはまり、学ぶことの楽しさを再確認。「学校で学んだことは、無駄に思えるようなことでも決して無駄ではなかった。そのことを発見できたことは、大きな財産になりました」。その日々を経て、専門学校を卒業後、株式会社有明測量開発社へと入社することになった。
 同社では測量部を経て、3年目から主に総務・営業関係を担当した藤本さん。ここで発揮されたのが大学時代、そして前職で磨いた会計の知識と「数字を見る力」だ。この会社を立ち上げた義父は『技術者』としての視点で会社を成長させてきたが、藤本さんはそこに新たな視点を加えた。当初は決算書も藤本さんが自ら作成し、数字から俯瞰して業績や会社の状態を把握したうえで、目標設定や業務改善にも力を注いだ。さらに、働き方改革が叫ばれるはるか前から、職場環境の改善にも取り組んできたという。確かな技術力と、企業としての安定した経営姿勢。この両者が相乗して同社は測量会社として確固たる地位を築いていくことになる。2001(平成13)年に代表取締役社長に就任して現在に至るまで、社員数は倍増して100名を超え、熊本で同分野のトップを走る企業となった。
 今年、創業60周年という“還暦”を迎えたのを機に、社名を「ARIAKE」と改めた。業務全体の8割を占めるのは、道路設計や橋梁、ダムなどの計画、宅地開発や上下水道などの公共事業で、自社で測量から設計まで行っている。請負工事を受注する際の入札ではこれまでの実績や技術力が判断されるため、それが同社の大きな強みになっているという。令和2年7月豪雨の際には、人が入れない被災地でドローンを飛ばして測量を行い、復興の大きな力となった。今後は、「より広く、より高く」事業を展開する。関西に支社を設置すると同時に、ネパールで行われるJICAの仕事を請け負うなど海外事業もスタート。熊本から全国、世界へと、より高みをめざし技術力を発揮していく。
これまで、自身の持つ力をいかして会社経営へと臨んできた藤本さん。「最近の学生は安定志向が強いと聞きます。それも選択肢の一つですが、私自身の経験から言えることは、自分の力をしっかりと理解して、それを発揮できる環境を自らつかみ取っていってほしいということ。きっと、もっと大きな飛躍を望める場所が見つかると思います」と、最後に学生へメッセージを贈ってくれた。

(2023年11月取材)

Memorial photo

2011(平成23)年に水前寺から現・幸田町に移転した「ARIAKE」の社屋。社内はオープンフロアが採用されており、風通しの良い社風を象徴している

黄綬褒章の受章に際し、2023(令和5)年8月には記念祝賀会が開催された(県協会主催)。多くの賓客が、藤本さんの受章を祝福した

授与された黄綬褒章記など

2023(令和5)年で創業60周年を迎えた同社。9月には創立60周年記念式典・講演会を開催した。

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