経済学部「経済政策Ⅰ・経済政策」で日本銀行熊本支店長の田原謙一郎氏よるゲスト講義が行われました
2025.07.29
7月15日(火)、経済学部の授業「経済政策I・経済政策」(担当:岡村薫准教授)で、日本銀行熊本支店 支店長・田原謙一郎氏を講師にゲスト講義が行われました。本授業は、ミクロ経済学における市場の失敗を是正するための政策について事例を踏まえながら分析・解説するもので、この日は1221教室にて217名の学生が聴講しました。
講義では、日銀熊本支店が今年3月に発表した調査報告書「熊本県内の観光の現状と今後の課題」の詳細な解説のみならず、熊本県の課題として近年取り上げれることの多い熊本の物価・所得・賃金動向と交通問題についても解説をいただきました。まず熊本県内の観光の現状について、全国の動向とたがわずインバウンドが増えており、その特徴として「半導体関連企業の集積により、台湾からの観光客が顕著に増加している」と述べ、国内観光においては「来年開催予定の熊本デスティネーションキャンペーン(DC)※に向け、熊本への旅行意欲が高まることが期待される」と言及。今後の課題として、「熊本での滞在日数や時間を延ばし、観光客1人1回あたりの旅行支出(観光消費単価)を高めることが重要」と強調しました。
また、人手不足への対応や県内各地への観光客の分散についても触れ、「観光は地域に広く影響を与える重要な産業であり、熊本県では観光関連産業の成長による地域活性化が期待されている。特にインバウンド需要の拡大が見込まれるなかで、地方への誘客が進むいまこそ熊本にとって新たなチャンス。こうした需要を取り込むためには、交通インフラの整備や地域資源の発信により観光コンテンツを強化し、関係者が連携して取り組むことが求められる」と述べました。
続いて、消費者物価の動向についても言及。過去20年の推移データを提示しながら、「熊本県の物価水準は全国平均をやや下回るが、九州内では2〜3位に位置している。全国的に物価が上昇するなか、本県では名目賃金(労働者が実際に受け取る賃金の金額)の上昇を背景に、雇用者所得も増加傾向にある」と説明しました。
最後に、株式会社トラフィックブレイン・太田恒平氏の先行研究をもとに、熊本の交通課題についても解説。「熊本の渋滞は政令指定都市の中でワースト1位。日本一長い信号サイクルがバスの遅延や市街地の分断を招いており、人材流出の要因にもなっている。交通環境の改善には、まだ多くの余地がある」と締めくくりました。
※デスティネーションキャンペーン(DC):JRグループ6社と地元行政、観光関係者が連携して実施する大型観光キャンペーン