2026年度「次代舎」プレセミナーを開催しました
2026.07.21
はじめに、本学付属産業経営研究所長の伊津野範博商学部教授が挨拶に立ち、次代舎のカリキュラムの特徴や狙いについて説明しました。
続くプレセミナーでは、商学部の足立裕介教授(専門:中小企業論)が登壇。足立教授は、前職の政府系金融機関における融資業務に10年間、調査研究部門に20年間携わった計30年のキャリアをいかし、世界中の経営学者が導き出した普遍的な「経営理論」と、自ら目の前で見てきた「現場の実例」を融合させた講義を展開しました。
冒頭、足立教授はデータをもとに、不況期に高い収益力を維持した企業の共通点として「経営理念を従業員に浸透させている」、「従業員の満足度を重視している」ことを挙げ、この点こそが不確実な時代を生き抜く競争力の源泉であると指摘。講義ではこのメカニズムを解説するために、危機の性質や変革のアプローチが異なる2つの対照的な実例が紹介されました。
1つ目は、予測不可能な「突発的な大災害」に対し、東日本大震災の被災直後から3年という短期間に復興を遂げた水産加工会社のケースです。同社は、発災直後には経営者の迅速な意思決定と強固な取引先との信頼関係で事業を継続。足立教授は、このプロセスから、激しい環境変化に適応して社内外の経営資源を再構築する能力「ダイナミック・ケイパビリティ」の重要性を解説しました。さらに、災害の急性期が過ぎた後は、経営理念にもとづく従業員からの自発的な提案を活発化させ、経営手法をトップダウンからボトムアップへと変容させました。その結果、早期の黒字化や米国進出を遂げたとし、同社の軌跡から経営理念が浸透した組織における自発的な行動の強みを強調しました。
2つ目は、世のなかの常識や前提条件がくつがえる「パラダイムシフト」に対し、経営者のビジョンと長期にわたる戦略的リーダーシップで立ち向かった鍵メーカーのケースを紹介しました。事例に挙げられた会社は、戦前・戦後は金庫用ダイヤル錠(国内シェア9割)、1990年前後は自販機用鍵(国内シェア7割)へと、時代の変化に伴う既存需要の縮小をいち早く予測し、新たな事業で常に高シェアを維持しながら、現在は国内で5割のシェアを誇る賃貸住宅用の鍵開発というコアビジネスのシフトに成功しました。この事例から足立教授は、既存事業を深める「知の深化」と、未来の可能性を求めて新しい領域を開拓する「知の探索」をバランスよく両立させる「両利きの経営」の必要性を強調しました。
最後に、これらすべての変革や組織能力を支える土台は「経営理念の浸透」が生む組織文化であり、職場の心理的安全性が従業員の満足度と業績の好循環をもたらすと総括しました。受講生からの「転職など人の入れ替わりが多い現代において、経営理念をどうやって職員に浸透させるべきか」という実践的な質問などに対しても足立教授が丁寧に回答し、プレセミナーを締めくくりました。
2026年度の次代舎は、8月22日(土)から2027年3月2日(火)までの約7カ月間開講予定で、8月20日(木)までこちらから申込受付を行っています。
