差別と人権に関する講演会~南相馬市の現状「逃げ遅れる人々」~が開催されました

2018.11.29

 11月29日(木)、14号館高橋守雄記念ホールで差別と人権に関する講演会が開催されました。この講演会は、学生たちに差別と人権に関してより深い学びの機会を設けることを目的に、例年第一部と第二部の学生を対象に昼と夕方の2回開催されているもので、今回は第一部(4時限)に175名、第二部(前時限)に30名の述べ205名の学生・教職員が参加しました。

 今回は、福島県南相馬市在住で特定非営利活動法人さぽーとセンターぴあ代表理事の青田由幸氏を講師に迎え、“南相馬市の現状「逃げ遅れる人々」”をテーマに講演がありました。2011年の東日本大震災発災時から今日に至るまでの災害避難者と支援者・福祉事業所の動きを通して見えてきた避難所・福祉避難所が抱える課題が語られ、聴講者は熱心に身を傾けました。

 開始を前に、幸田亮一学長より「本学は長い間、差別と人権について西日本の大学でも有数の取組を続けています。そして一昨年の熊本地震の時、学生・教職員の皆さん、地域で暮らす多くの人々が被災し、この14号館で災害弱者と呼ばれる人たち、特に車いすを利用する方など身体的な補助を必要とされる方々を積極的に受け入れました。社会福祉学部を中心に学生・教職員が45日間に渡って支援活動を行ったこの場所で、南相馬市から青田由幸先生をお招きし、災害弱者の方々のお話をお聞きできるのは大変素晴らしい機会。皆さんの大学4年間の学びの中に残る貴重なお話になると思います」と挨拶がありました。

 障害者(児)やサポートを必要とする高齢者の支援を中心に活動を行う青田氏は、震災直後の町の写真や南相馬市の被災状況図、福島原発事故後から現在までの小児甲状腺がんに関する資料などを用いて、地震・津波という自然災害や原発事故・風評被害からの孤立といった人災について分かりやすく解説。「誰も経験したことの無い大きな災害からの避難はさまざまな混乱を招いた。特に支援を必要とする障害者や高齢者などの災害弱者が避難先で孤立しやすく、避難生活や援助を諦める状況に陥りやすい。平時から大規模・中規模・小規模災害を想定し、避難困難者を生み出さない体制づくりが大切」と地域に密着した福祉支援体制づくりの必要性を指摘しました。

 また、福島原発事故の影響について「福島から避難している人、福島に残っている人の心は壊れ始めてきている。自主避難者の過酷な現状や被爆の影響(がんや遺伝子への影響)に関する不安から結婚や出産を諦めてしまう若者の話も聞く。『先天性の障害や病気を持つ子が生まれてはいけない』という優生思想に時代が戻ってしまうと、先天性の障害や病気を持つ人、高齢者や心身の健康に不安がある人といった弱者への差別・閉塞感が更に強くなってしまう。原発が各地で再稼働している今、原発事故は福島だけの問題ではなくなってきている」と訴えました。

 講演会を受講した佐枝桃佳さん(英米学科3年)は「大学では語学以外にも『環境論』を学んでいます。実際に福島で暮らす青田さんのお話をうかがって、ニュース番組で得ていた“被災地・福島”という知識と重みの違いを感じました。また、福島に住む子どもたちの甲状腺がんについて初めて知りました。熊本でも大きな地震がありましたが、再び発生しないという保証はないと思います。今回の講演を受けて多くのことを考えさせられました」と語りました。

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