「第20期水俣学講義」が開講されています

イベント

2022.01.20

 

 社会福祉学部の水俣学講義で1月13日(木)、法政大学名誉教授で法政大学第19代総長の田中優子氏がオンラインで講演しました。会場で4名、オンラインで52名の方が受講しました。

 今回で20期目となる水俣学講義は、社会福祉学部の正規科目として開講しており、学内教員に加えて、水俣病患者、学外の研究者、ジャーナリスト、医師、法律家などを講師に迎えています。

 今回登壇した田中氏は、法政大学在学中に授業で石牟礼道子著の『苦海浄土』とであい、「方言で書かれた本というだけではなく、水俣病の病状や医学的なデータも含め書かれている。この様な文学がこの世にあるのかという衝撃を受けた」と語り、『石牟礼道子と水俣学』と題して講義が行われました。

 田中氏は石牟礼道子作品から、「戦後の高度経済成長によって私たちは何を失ったのか」、「島原・天草一揆」をとりあげた作品『春の城』で「歴史上で一揆があるかないかは大きく違う。“モノ言えない社会”ではなかった」など現代にも繋がる普遍的なテーマを挙げ、水俣学の可能性を語りました。

 また、「水俣病によって、写真、映画、文学、ドキュメントなど沢山のアート作品が生み出された。さまざまな方が水俣に住むようになり、その土地が持っている本質的な存在感があらゆる形をとって出現した。同様のことが福島でも起こりうると考えていたが、原発事故から10年経ち、水俣ほどアート作品が生まれていないのは、その土地から離れざるを得ず、戻れないという状況にあるから」と、福島の原発問題にも言及しました。

 最後に、「石牟礼道子の視点から水俣学を改めて考えてみると、“まだまだこれからやることがある”と感じるテーマがいくつもある。地域と地域をつなげる視点が重要であり、ありとあらゆる人間の生活に関わること、近代化とは何だったかという疑い、新しい価値観をどう作っていくのかということなど、発展的な広がりを持ちつつ、さまざまな問題を含んだ水俣学が必要になってくる」と、講義を締めくくりました。

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