公開講座 第30期「DOがくもん」特別講演会を開催しました

イベント

2022.11.15

 11月12日(土)、第30期「DOがくもん」の1回目の講演会が本学14号館高橋守雄記念ホールで開催されました。今回は、共催する熊本日日新聞社と本学を運営する学校法人熊本学園がともに創立80周年を迎えることを記念した特別講演会で、開会に先立ち主催者を代表して金栄緑副学長が挨拶しました。金副学長は、「本講演会は本学園と熊本日日新聞社がともに50周年を迎えた1992年にスタートし、今期で30期を迎えました。今日の講演会が皆さん自身の人生、生き方を問い直す機会になればうれしい」と参加者に呼びかけました。講師に脳科学者で医学博士の中野信子氏を迎え「脳科学から考えるわたしたちの未来~教育・AI・環境~」と題して講演。3年ぶりの対面での講演会で約500名が聴講しました。

 中野氏は「未来のことを考えられるのは人間だけです」と話し始めました。「現在は不確実性の時代といわれ、脳は不確実なことやあいまいを嫌う性質があり、決断できることが良いとする傾向にあるのは、脳が楽をしたいからです」と述べ、「脳の重さは体重の2~3%でほんのわずかであるにもかかわらず、酸素やブドウ糖など多くのエネルギーを使っている。体を動かしていないのに考えすぎて疲れるのは脳が酸素を多く使っているから。脳が楽をするには、もともと決まっていたことを受け入れることで、不確実な時代では、一つひとつを自分で決断しなくてはならず、さらに脳は疲れる」と説明しました。

 日本という国が政治的にも地理的にもとても特徴があることに触れ、「地理上ではプレートの境に存在していて、頻繁に地震が起きる。さらに大雨、台風などの災害も多く、全世界の災害被害総額の20%を占める災害大国であり、楽観主義だと生き残ることができず、復旧復興のためには皆で力を合わせなければならない。このような環境が、心配性で調整能力に長ける人物をつくりあげることになる」とし、「日本人は、常に自分自身を問い直し、脳を作り変えている。自分の持っている悔しい、苦しい思いを価値に変えるための努力ができるので、それを人生にいかしてほしい」と語りました。

 最後に、「脳科学はこの30年で進歩している。かつて脳細胞は再生しないと言われていたが、現在では使っていれば脳細胞は再生することが分かっている。特に言語性知能は、言語によって蓄積されるもので、これは健康で年齢を重ねると伸びていくものなので、社会に還元すれば、それは大きな資産になる」と話し、「今の社会はAIの存在なしには語れない。AIは学習により迷いなく答えを出すが、人間は『どうしよう』を抱えておくことが大切。AIと戦うのではなく、共生的未来を築くことが必要です」と締めくくりました。

 質疑応答では「自己肯定感をあげるにはどうすればいいか」など質問が相次ぎ、中野氏の穏やかながらも核心を突いた回答に参加者は聞き入っていました。

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