「大学院国際文化研究科2022年度特別ゲスト講演」が開催されました

大学

2023.03.02

 2月21日(火)、本学14号館で「大学院国際文化研究科2022年度特別ゲスト講演」が行われ、九州大学大学院経済学研究院の水野敦子准教授が「日本の農業分野における外国人労働者受け入れ:熊本県阿蘇農業の繁閑差への対応」と題して講演。本講演は、多文化共生・共創への道探しをテーマにする講義の一環で、大学院生、教職員など20名が聴講しました。

 水野准教授は、人口減少や高齢化が進む農村地域では、外国人労働者を雇用労働力として受け入れることが不可欠となっており、植物を栽培する耕種農業では、畑作・野菜、施設園芸で拡大していると解説。その典型的な地域である熊本県の一例として、阿蘇地域を取り上げました。日本の農業分野の外国人労働者は、主に「技能実習生」※1で、2019年に導入された在留資格「特定技能」※2の就業者数も増加傾向にあります。「技能実習生」は、原則、実習先の変更はできないが、「特定技能」は、転職や派遣が可能で、就業可能な業務も広いといった違いがあると説明。農繁閑期の差が大きい阿蘇地域においては、年間を通じた外国人労働者の作業平準化を図るため、阿蘇農協が農繁期の異なる熊本農協に派遣している事例や、受入れ農家が農閑期に新たな作目の栽培を開始した事例を紹介しました。

 今後さらに高齢化が進む日本においては、外国人労働者の導入拡大が見込まれ、年間を通じた作業の平準化が課題となり、「周年作業の確保は、労働者にとって、農閑期の収入増となり、加えて勤続年数に伴う賃金上昇が、職場移動のコストを除いた収入増加より大きければ、特定技能への移行後も定着して働くことにメリットがうまれる。雇用主にとっては、雇用継続により賃金コストが上昇しても、技能獲得による労働生産性向上と周年農業によって生産拡大が可能となり、新たな技能実習生受け入れにかかる費用の削減が可能となる」と述べました。「技能実習生の受け入れを繰り返すより、特定技能への移行を見据え、継続して働くことを選ばれるような雇用環境の整備が、労使双方にメリットを生み出し、良い関係性を築くことができます」と講演を締めくくりました。

 ※1:「技能実習」には、1号(在留期間1年)、2号(同2年)、3号(同2年)まであり、1号から2号に変更する場合(3号へ移行する 場合一時帰国が必要)、実習生は技能評価試験で合格することが必須。

※2:「特定技能」は特定産業分野の各業務従事者が該当。1号と2号(建設、造船・船用工業)がある。技能試験や日本語試験が課されるが、技能実習2号修了者は免除される。在留資格の更新により5年まで延長可能。

 

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