令和5年度春期公開講座が始まりました

イベント

2023.06.20

 6月3日(土)、新1号館 みらい121教室で令和5年度春期公開講座が開講しました。今回は、2020年7月に発生した熊本豪雨からの復旧とこれからの南九州における観光産業の展望について「肥薩線の復旧とこれからの観光 ~熊本から広がる南九州の魅力~」のテーマで、6月24日(土)まで全4回にわたり開催予定。2011年に人吉市と本学が締結した包括的連携協定に基づき、人吉市の発展と熊本豪雨からの復興を後押しすることを目的に、人吉市民に対して初の試みとなるライブ配信も実施します。初回は、大学の会場に65名、人吉市の会場で15名が受講しました。

 開講式では公開講座運営委員長の土井浩嗣外国語学部准教授(専門:朝鮮近代史、農業史)が「地域に根ざした総合大学として、本講座が人吉市の豪雨からの復旧・復興とさらなる発展につながることを期待している。肥薩線の魅力と可能性を改めて皆さんに発見していただきたい」と挨拶しました。

 講座では、幸田亮一商学部教授(専門:経営史)が「肥薩線と熊本、災害からの復旧」と題して登壇。JR肥薩線の復旧の重要性と意義について触れ、「子どもや高齢者などの交通弱者にとって利便性が高く、復旧が進むことで外国人観光客にとっても信頼性のある交通手段である。また、肥薩線は青井阿蘇神社といった多くの文化財を含み、近代化遺産を有する地域において特別な役割を果たしている」と話しました。
 さらに、肥薩線の歴史を紐解き、「19世紀の鉄道技術を詰め込んだ産業遺産であり、戦時中には鉄道が国策として重要視されるなか、物流などで大きな役割を果たした。東アジアの路線図の一部として存在の意義を広い視野で見る必要がある」と説きました。
 最後に、フランスの社会学者M.アルヴァックスによる「集合的記憶」の概念を引用し、、個人の肥薩線に対する思いや断片的な記憶を組み合わせ、SNSなどで共有する仕組みを構築することで、多くの関係者を巻き込んで対話を重ねていくことが必要と述べました。

 受講した女性は「熊本県民として人吉と肥薩線周辺の復興について学び、自分に何ができるか考えたいと思い受講した。講座の内容が充実しており、人吉市と中継でつないで当事者の声も聞ける環境が整っているところや、自分の興味があるところから学べるところに公開講座の魅力を感じている」と感想を語りました。

 6月24日(土)の最終講では、肥薩線を活用した人吉の地域活性化を考えるワークショップを実施し、閉講式には人吉会場からのオンラインで迫田浩二人吉市副市長も参加する予定です。

※ 記憶は集合的な性質をもち、絶えず再構成され、野山などの空間が記憶を呼び起こすというもの

SHARE: