第22期水俣学講義で水俣の暮らしを守るみんなの会の山下代表と、水俣病互助会事務局の伊東氏が登壇

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2024.01.18

 社会福祉学部の授業科目として、全15回オムニバス形式で開講されている第22期「水俣学講義」は、水俣病患者をはじめ、さまざまな形で水俣病と関わる方々を講師に迎え、水俣病を総合的・多面的に学び、現代社会における問題、困難を解決するための基礎的知識を修得するもの。約200名の学生が履修しています。12月14日(木)に行われた11回目の講義では、「水俣の暮らしを守るみんなの会」代表の山下善寛氏と、水俣病互助会事務局の伊東紀美代氏が「私たちの修学旅行(チッソ・水俣病に学ぶ旅)」をテーマに講演し、インターネット中継を通して一般の方にも公開されました。

 はじめに、山下氏は「皆さん旅行は好きですか。私自身、熊本学園大学の先生方と春休みを利用して、国内外問わずいろいろな場所を旅行しました。今日は私の50年前の思い出とともに、チッソと水俣病事件を学ぶ旅へご案内します」と述べ、明治後期に創業し、水俣病の原因をつくった日本の化学工業メーカー、「チッソ株式会社」に入社してからの経験と葛藤を語りました。水俣病は昭和31年、山下氏が同社へ入社した同時期に発生を確認。山下氏はチッソ社内での水俣奇病研究関連の業務を続けながらも、利益優先で隠蔽体質の同社で、過酷な環境のなか働いた労働者も一被害者であるという気持ちが目覚め、水俣病事件の被害者とともに、活動を続けてきました。山下氏は、「67年経った現在も水俣病事件の裁判は続いており、解決していない。水俣病事件だけでなく、長崎・広島の原爆投下、原発問題、沖縄の埋め立て問題、世界各地で起こっている戦争など、その背景には多くの犠牲者がいることを忘れないでほしい」と語りました。

 次に、伊東氏は水俣病の被害者を支援するために、東京から熊本県水俣市へ移住し、被害者の困りごとを一緒に考え、解決するサポートをはじめ、被害者やその家族に寄り添いながら、水俣病訴訟に携わってきた経験や活動内容について語りました。伊東氏は、「水俣病事件は被害者には何の落ち度もないのに孤立させられ、回復不可能な大きな犠牲を強いられた。原因者のチッソの姿勢、行政権力の誤びゅう、医学者をはじめとして学者たちもあるべき働きをしなかった。これらはすべて犯罪的である。私たちは社会の理不尽、不正義についてともに学び考え、犠牲を強いられた人々とともに怒りましょう」と強い思いを述べ、講演を結びました。

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