公開講座第31期「DOがくもん」第2回講演会でエコノミストの門倉貴史氏が登壇

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2024.01.11

 12月9日(土)、本学と株式会社熊本日日新聞社が共催する第31期「DOがくもん」の第2回講演会が本学14号館高橋守雄記念ホールで開催されました。フジテレビ「ホンマでっか⁉TV」などで活躍するエコノミスト・BRICs経済研究所代表の門倉貴史氏を講師に迎え、約300名が聴講。「変動する世界経済と日本」と題し、世界経済の動向と日本経済のこれからについて語りました。
 門倉氏は、今の時代をVolatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字をとったVUCA(ブーカ)の時代であるとし、先行きが不透明で予測が困難な状況にあり、企業経営にとっては経営計画を立てるのが難しいと解説。ロシア・ウクライナ問題についても言及し、「エネルギー資源や穀物資源などロシアの主要産品が世界に出回らないことで、需給のバランスが取れず、価格が高騰している。この状況は、エネルギー資源も穀物資源も輸入に頼る日本にとって物価上昇に拍車をかけている」と説明しました。
 また、円安状態が続いてる原因についても触れ、「日米の金利差の拡大が大きな要因。アメリカは金融引き締めを行い、日本は異次元の金融緩和を継続しているため、金利の高いアメリカのドルで運用していく傾向が強まる」と語りました。さらに、今後のアメリカの金融政策の動向については、「2024年の中ごろになると、金融引き締めの影響でアメリカの景気が後退局面に入る可能性が高い。ここでアメリカが金融引き締めから金融緩和へ移行し、日本もゼロ金利政策を解除すると、日米の金利差が縮小し、2024年の中ごろから後半以降は円高の局面になるのでは」と述べました。
 そして日本経済についても述べ、日本経済が中長期的に成長していくためには、労働力人口を確保する必要があるとし、企業による女性の社会進出の促進、高齢者の雇用促進、外国人労働力の積極的活用を提言。労働生産性を引き上げていく必要もあると指摘し、長時間労働や残業などの日本的な労働慣行から脱却してモチベーションが高まりやすい曜日や時間帯に集中して仕事をする必要性を語りました。また社員のモチベーションを上げる方法について、これまでは賃金や労働時間が大きく影響していたが、研究結果にもとづき、これからは人間関係が大事であると主張。「職場における上司と部下の良好な人間関係によって生産性が向上する。人から注目されてやる気が出るような人間関係を職場で作っていく必要がある」と述べました。
 最後に、個別の視点での資産形成についてインフレ対策を交えてアドバイスし、「徹底した節約、副業、投資による資産運用が大事。リスクを取って自身の資産を分散して長い期間運用してほしい」と語り、講演を終えました。
 講演後には、門倉氏と本学経済学部小葉武史教授(専門:マクロ経済政策)とのトークセッションが行われ、世界的半導体メーカーTSMC(台湾積体電路製造)の熊本県進出に伴う地域経済への影響や、円安と物価上昇が続くなかで日本銀行が低金利政策を続ける狙いなど、熊本県のこれからや日本の金融政策について軽快なトークで会場を沸かせました。

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