オープンデータを活用した地域イベント企画のワークショップを実施しました

イベント

2024.02.07

 1月20日(土)、「新1号館 みらい」141教室で、オープンデータ(※1)を活用した地域イベントを考えるワークショップを開催しました。これは、本学と熊本県が締結したオープンデータ利活用の推進に関する連携事業の一環として、デジタル人材の育成やオープンデータ利活用の機運の醸成につなげることを目的として実施したもの。ICT(情報通信技術)を活用した地域課題の解決やデジタルコンテンツ制作に取り組むCode for Kyushuの協力のもと、学生、社会人、熊本県および本学の関係教職員あわせて約40名が参加しました。

 金栄緑副学長の開会の挨拶後、境章名誉教授(専門:情報科学)がオープンデータの定義や意義、今回の企画の趣旨を説明。続いて、デジタル庁オープンデータ伝道師(※2)の牛島清豪氏(Code for Kyushu代表)が「オープンデータが地域を変える」と題し講演を行いました。地域におけるオープンデータ利活用はオバマ政権下のアメリカが起源とし、日本においては東日本大震災を契機にオープンデータの機運が高まり、国内で政策整備が進められてきたと解説。その一方で、官公庁や自治体でデータのライセンスが未統一という課題を指摘し、データの取り扱いに対する注意と著作権やライセンスの重要性について説明しました。さらに、更新頻度やPDFなどのデータ形式を理由に開示に消極的な自治体も存在すると言及。牛島氏はデータの整理が知識や知恵の創出へと繋がるDIKWモデル(※3)を示し、今回のように官民連携市民共創型のワークショップが新しい街づくりや地域のDXに寄与することが期待されていると参加者に呼びかけました。最後に、「オープンデータだけでなく他のデータとの組み合わせや使い方を考えることで無限の可能性が広がり、データを価値あるものに変えていくことが重要である」と述べました。

 その後、九州先端科学技術研究所の上田健次氏のファシリテーションのもと、「地域を楽しむイベントをデータから考えよう!」と題し、参加者の好きなことと熊本県がオープンデータカタログ上で公開しているオープンデータを掛け合わせ、地域イベントを創出するアイデアを出し続け、短時間でまとめていくワークショップ「アイデアソン」(※4)を実施。参加者は6班に分かれ、各自で猫やドライブなど好きなことを3つ考え、自己紹介を交えて、お互いの趣味や好みについて楽しく話し合いました。続いて、「文化財一覧データ」などオープンデータの種類が書かれたデータカードを3つ引き、自身の好きなことと掛け合わせて地域を活性化させるためのイベントを考えました。参加者は隣同士、班内、参加者全体と範囲を広げながら自身の考えをシェアし、さまざまな情報やアドバイスをインプットしながら自身の企画をブラッシュアップしていきました。ワークショップの間、徳永美紗氏(Code for Fukuoka代表)によるグラフィックレコーディング(※5)も作成され、会場は終始盛んな意見交換が行われました。

 個人のアイデアがまとまったところで、参加者全員で一つひとつの案に投票。そこから6案を選び、グループワークで各案のプロモーションや経済効果を図るデータを調べ、どのように地域が良くなるかをポイントに企画を練り上げて最終発表を行いました。ある班は「音楽」と「遺跡数」を掛け合わせ、プロのアーティストから地域ダンス教室の生徒まで、幅広い世代が参加する「遺跡で地域融合音楽フェス」のアイデアを提案。このイベントの経済効果をイベント前後の遺跡への来場者数や地域ダンス教室の生徒数の増加率で図るとし、地域へのポジティブな効果として、異なる世代の人々の交流が生まれたり、イベント参加を目標とする高齢者の健康が促進されたりすることが期待され、地域への知識と愛着が深まると発表しました。「ゲーム」と「子育て支援施設一覧」を掛け合わせ「社会問題子どもはどう解決する」と題し、子どもたちにゲーム感覚で社会問題を解決させると提案した班は、「社会問題」を「フードロス削減」に絞り、それと食育と結びつけながら子どもたちに考察の機会を提供する企画を発表。経済効果を図るデータとして食べ物の廃棄量や地域の特産物と廃棄量の相関性に着目しました。子どもたちに考えさせる利点として、子どもならではの斬新なアイディアやレシピの創出、そして家庭におけるフードロス削減の啓発に繋がると言及。さらに、子どもたちが提案したレシピが地域の新たな特産品を生む可能性にもふれました。

 「料理」と「文化財一覧データ」を掛け合わせ、昔の人が食べていたの料理の再現イベントを企画した藤川彩夏さん(経済学科2年)は「もともと熊本が好きで、地域の活性化について考えるイベントがあったら参加したいと思っていた。自分の案を具現化するために、チームの方が協力してさまざまなデータを提供してくださり、より堅実なイベント案として発表することができた。講評では講師から新たな視点をいただけ、自分のアイデアに対する理解が深まり、とても勉強になった。自分の提案が他のアイディアと結びついて全国に自慢できるような素晴らしいイベントになれば嬉しい。データをさまざまな視点から捉え、それをどのように活用できるかを考えることができるようになったので、今後のゼミや大学での学びにいかしていきたい」と感想を述べました。

(※1)オープンデータ:国、地方公共団体及び事業者が保有する官民データのうち、国民誰もがインターネット等を通じて容易に利用(加工、編集、再配布等)できる形で公開されたデータのこと
(※2)オープンデータ伝道師:オープンデータに造詣の深い有識者としてデジタル庁が派遣。オープンデータの理念や利用方法を広め、企業や一般市民といった様々な利用者層に対して認識を高める役割を果たす

(※3)DIKWモデル:情報をデータ(Data)→情報(Information)→知識(Knowledge)→Wisdom(知恵)の4つの階層に分けることで、情報や知識をうまく扱う方法
(※4)アイデアソン:アイデアとマラソンをかけた造語で、アイデアを出し合い“続けて”まとめていく課題解決型のワークショップのこと

(※5)グラフィックレコーディング:可視化された議事録。ミーティングや講演の内容を、文字とイラストを使って記録する方法のこと。参加者がリアルタイムで記録を共有できるよう、大きなホワイトボードや模造紙に描かれるスタイルが一般的

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