【教員が紹介する!おすすめの本】『あぶない法哲学 常識に盾突く思考のレッスン』住吉雅美著、講談社現代新書(2020年)
2024.02.14
熊本学園大学商学部教授 春田吉備彦
私は商学部に所属するが、法学部の学習の中心は、「在る法」(実定法)である。例えば、民法・商法・憲法・行政法・労働法などの条文や裁判例や学説を中心に、いわゆる六法を中心に学習する。とはいえ、「在る法」は「在るべき法」と一致するとは限らない。世界中を憂鬱にさせているのが、あの国の他国への一方的侵略(「特殊軍事作戦」)である。あの国では「憲法」を危うくするとして、法律上の「外国の代理人」に指定することで、あの国の一部国民の反対運動を弾圧している。
個人が法に従う義務があるのかとか、法を尊重したうえで個人が法に従わないこと(「市民的不服従」)をどう捉えるのかといった考察は、実定法ではなく、「法哲学」という基礎法において行われる。法哲学は、当然視される社会秩序について、根底から考えるアプローチを提供する。
他者とのコミュニケーションを強制終了させて単純な決めつけと感覚で行動しがちな我々に、考えるヒントや対話や他者との共存・共生のための豊饒な土台を提供する。
本書は、多様なテーマと具体的な事例、それから、法哲学に関係する(法)哲学者の業績など、どれを取り上げても生き生きと論じられ、また、とても読みやすい。今の混迷した世の中を読み解くヒントがあり、ハウツーものではない、自分の賢慮を鍛える一冊になることは間違いない。
タイトル | あぶない法哲学 常識に盾突く思考のレッスン |
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著者名 | 住吉雅美 |
出版 | 講談社現代新書(2020/5) |
ISBN | 9784065193778 |