第一部社会福祉学科の「災害ソーシャルワーク」でゲスト講義を実施しました
2026.06.02
社会福祉学部第一部社会福祉学科では、2026年度より新科目「災害ソーシャルワーク(担当:黒木邦弘教授)」を開講しました。同学科がこれまで展開してきた1年次(基礎)の「災害と社会」、2年次(発展)の「社会共生演習Ⅰ」に本科目が加わったことで、3年次(応用)へと続く社会共生コースの体系的な学びが完成しました。災害福祉を専門的に学ぶ科目の設置は全国的にも珍しく、地域に根ざした「災害に強い福祉人材養成」の体制が整いました。
5月11日(月)からは、災害支援の第一線で活躍する専門家を招き、全3回のゲスト講義を実施。第1回目は、特定医療法人成仁会くまもと成仁病院居宅総合支援センターの村上充部長が登壇しました。村上氏はまず医療ソーシャルワーカー(MSW)の役割について、病気やケガで心身が弱った患者や家族に寄り添い、他職種との「コーディネーター役」としての重要性を解説。
後半は、自身の災害支援活動の原点となった熊本地震での被災体験に触れ、全国からの支援に「恩返しをしたい」と、能登半島地震など各地で計50日間の災害支援を行った経験について語られました。能登の1.5次避難所では、避難者のアセスメントや搬送調整など、日ごろのMSW業務と変わらないスキルが現場でいきた実績を紹介。他職種との連携においてソーシャルワーカーが調整役として重宝された経験を示し、災害現場では高齢者から子どもまで対応できる幅広い視点と知識が必要不可欠であると述べました。
第2回目となる5月18日(月)は、元弁護士で本学元教授の東俊裕氏が登壇しました。東氏は、熊本地震直後に熊本県内で立ち上げた「被災地障害者センターくまもと」での、約3年間に及ぶ支援活動について講演しました。活動初期は、個人情報保護を理由に行政から障害者の所在が開示されず、被災者へ支援の周知ができないという大きな壁に直面。しかし、熊本市の協力を得て公共施設にチラシを置き、市在住の障害者へ周知を広め、ニーズを掘り起こし、最終的に669名の支援に至りました。東氏は、この活動を通じて「地域に潜在していた精神障害者の多さや、平時の社会的孤立といった『見えない課題』が可視化された」と語り、これらの支援記録を77の支援類型と11の支援系統にデータ分析・分類した結果も示しました。学生から「災害時に障害者を受け入れる避難所はあるか」という質問に対し、東氏は熊本地震の際に福祉避難所の利用率が低かった実態を挙げ、「今後は一般の避難所に、最初から『インクルーシブな環境』を作るべき」と提言。障害特性への理解にもとづいた専門的援助の重要性を説くなど、学生たちの質問へ丁寧に回答しました。
第3回目の5月25日(月)には、日本福祉大学福祉経営学部の山本克彦教授が登壇。山本教授は、東日本大震災や能登半島地震などの現場における福祉的支援の実践知を語り、「災害医療が命を救う超急性期を担うのに対し、ソーシャルワークは避難所や仮設住宅への移行期、そして生活再建をめざす復興期に深く関わる」と述べ、「災害ソーシャルワーク」の役割について説明しました。
また、山本教授は、東日本大震災の際に全国の学生ボランティアを組織化して運営に関わってきた経験から、学生たちが被災者に寄り添い、本音や課題を引き出すアセスメントのきっかけをつくり、その後の生活相談員へと貴重な支援情報を繋ぐプロセスの重要性を指摘。最後に「災害が多発する現代、どこで被災地に関わるか分からない。復興とは単に元に戻す『復旧』ではなく、より安全で持続可能な地域を住民とともに再構築する未来への営みであり、ソーシャルワークはその基盤を支え続けている」と学生たちに力強いメッセージを送りました。
計3回のゲスト講義で、学生たちは災害福祉への知見を深める貴重な機会となりました。
