卒業生

クマガクフォーカス KUMAGAKU
FOCUS

大学時代に築いた人とのつながりを糧に全国トップシェアの特種車両架装メーカーを経営

株式会社 イズミ車体製作所
代表取締役社長

國武 幸弘さん

Kunitake Yukihiro

クマガク人物伝

1986(昭和61)年3月
商学部第二部商学科 卒業

1963(昭和38)年2月、上益城郡益城町生まれ。大学入学と同時に「熊本県対がん協会」(現「熊本県総合保健センター」)に入社。2001(平成13)年1月「株式会社 イズミ車体製作所」に総務部長として入社し、取締役、常務取締役、専務取締役、を経て2014(平成26)年8月に代表取締役社長に就任。

検診車は全国シェアトップ
熊本が誇る車体架装メーカー

 コロナ禍で、全国から特別な「ものづくり」が注目されている企業がある。

菊池郡大津町にある、今年創業91年の特種車両架装メーカー「イズミ車体製作所」。バスやトラック、ワンボックスカーなどを使用し、検診車・福祉車両・救急車・ドクターカー・移動図書館車・移動販売車・移動ATM車などをオーダーメードで製造し、全国各地に販売・納車している企業だ。なんと検診車は全国トップとなる40%のシェアを誇り、路線バスのEV車へのコンバート(転向)や、九州運輸局指定工場として、自動安全ブレーキに代表される先進安全装置搭載車などすべての車両の点検・車検・修理を手がける。医療体制に変革が求められたコロナ禍においても、全国から感染対策仕様の車両を受注し、存在感を発揮し続けている。その代表取締役社長を務める國武幸弘さんは、本学商学部第二部商学科の卒業生。働きながら大学でも学び続けるというストイックな学生時代を過ごした人物だ。

仕事と学問を両立させながら
人脈を広げた学生時代

 益城町で生まれ育ち、高校卒業後は県内企業へ就職するつもりだった國武さん。しかし、「将来のために『大卒』の学歴が必要になるのでは」と家族の勧めを受けて、仕事も大学も“両方同時に通う”道を選択した。「商大の商学科を選んだのは、当時第二部(夜間)があったから。あまり深く考えず、勢いで飛び込んだんですよ(笑)」。

 大学入学と同時に就職したのは、がん検診車で県内を巡回し、県民の健康診断を行う検診機関「熊本県対がん協会(のちの「熊本県成人病予防協会」、現「熊本県総合保健センター」)」。ここで定時まで勤務したのち、大学で講義を受けた。体力的にも勉強の進度的にも想像以上に大変な日々。「サークルなどには所属しませんでしたが、友人たちと飲みに行ったり旅行したりと、大学生らしい青春はしっかり楽しみました。ゴルフを始めたのもこの頃で、大学の職員さんとコースを回ったのも良い思い出です」。いろんな交流を通して、同級生や先輩後輩、先生、職員らと濃く深い時間を過ごし、人脈を広げた学生時代。これが國武さんにとって後に大きな財産となる。

熊本経済界で力となった
商大卒業生の絆

 卒業後も「熊本県成人病予防協会」で主に総務・経理事務として計20年間勤務した後、以前から交流のあった同社の古庄忠信代表取締役社長(当時)との縁で2001年に「イズミ車体製作所」へ総務部長として入社。「以前の職場で『使う』側だった検診車を、『造る』側へと転向。不思議な縁を感じました」。常務取締役、専務取締役を経て2014年に代表取締役社長に就任。着実にキャリアを積んだ。「社会人となってから特に感じるのが、学生時代に築いた人脈のありがたさです。学生時代にお世話になった方からの紹介で新たな仕事をいただくなど、熊本の経済界で活躍するクマガクの卒業生も多く、仕事をするうえで、大いに力になってくれます。私が大学で得た、一番の財産ですね」と微笑む國武さん。同窓生の絆を頼もしく感じているという。

 「イズミ車体製作所」で造られる車両は、すべてがオーダーメード。大手メーカーのように大量生産できない分、クライアントの細かなオーダーに応えられる確かな技術とノウハウの蓄積によって、業界内で独自の存在感を放っている。だからこそ、技術力向上やさらなる挑戦への姿勢はもちろん、「真心で対応し、丁寧に造ることが一番大事」と語る。「1台に携わる人数と完成までにかかる時間は膨大ですが、完成した車両を見たお客様から感謝の言葉をいただいたり、街中を走行している姿を見かけたりすると嬉しくて、また頑張ろうと思います」とやりがいを感じている。

若い世代に継承したい
ものづくりの真の魅力

 移動ATM車や移動薬局車、ランドリー車など災害現場で活躍する車両の製造も多く、同社の「ものづくり」の力が社会貢献にもつながっている。今後は東北・北陸など未開拓のエリアへの進出をめざすとともに、技術継承とさらなる発展のため若い人の力に期待している。「『製造業=苦しい仕事』のイメージがあると思いますが、当社は自分らしくやりがいをもって取り組める会社だと思います。働き方改革やワークライフバランスにも早くから取り組み、年に1度自ら全社員と面談を行い、より働きやすい職場づくりに努めているところです」。

 世界に1台だけの特種車両を、時間をかけて丁寧に造り続ける「イズミ車体製作所」。そのトップとして、今日も真心を込めて、人とのつながりを大事にしながら「ものづくり」に臨んでいる。

(2022年11月取材)

Memorial photo

障がいのある方の診療機会を確保するため、車椅子乗降用リフトを車体側面に配置した歯科検診車。換気や診療機器の新型コロナ感染対策を強化し搭載

國武社長と社員の距離も近く、現場では社員と積極的にコミュニケーションを取る

同社には野球をはじめ、サッカー、ミニバレー、卓球などのスポーツチームがある。國武さん(後列一番左)自身も元高校球児

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