熊本学園大学高度学術研究プロジェクトが「地域モビリティ共創研究プロジェクト 2023年度研究成果報告会」を開催しました

イベント

2024.04.01

 3月21日(木)、14号館5階第5・6会議室で「地域モビリティ共創研究プロジェクト」の2023年度研究成果報告会が行われ、学内外から約20名が参加しました。これは、研究活動を推進し特定のトピックス分野を担う研究者グループを「高度学術研究プロジェクト」として支援するプロジェクトで、令和5(2023)年度より本学高度学術研究支援センター主催で開始。第1期のテーマである「地域モビリティ共創研究プロジェクト」の成果報告会は2023年7月7日(金)のキックオフセミナーに続き、二回目の開催となりました。

 開会の挨拶で細江守紀学長は、「今回の高度学術研究プロジェクトは、公募型から採用された記念すべき第1号のプロジェクト。TSMCの熊本県進出に伴い、地域共創モビリティの研究テーマはますます興味深いものになっている。しっかり研究成果を出していただきながら、来年度再来年度に向けて、さらに大きく成長してほしい」と述べました。

 報告会では、小葉武史経済学部教授(専門:マクロ経済政策)が「シェアリングエコノミーの経済理論モデル~家計行動」と題し、シェアリングエコノミーの需要面のモデル化に取り組んだ研究の成果報告を行いました。シェアリングエコノミーについてはそれを分析する汎用的な経済理論モデルを欠くことが指摘されていることから、所有と消費の選択モデルをベースとし、「最終消費財を家計が保有する中間投入財・耐久財・労働時間を用いて家計内で生産するか」又は「市場から調達するか」を選択するモデルを構築。モデルの比較静学分析により、観察事実や直感に反しない結果を得たと成果を報告しました。

 続いて、溝上章志経済学部教授(専門:都市・交通政策、まちづくり)が「ライドシェアの導入可能性とその価値評価」と題して研究報告を行いました。荒尾市の実装されたオンデマンド型シェアモビリティであるおもやいタクシーの利用状況に関する観測データを用いて、 MAUMSに内挿している現利用手段からおもやいタクシーへの転換モデルを更新するデータ同化手法を開発。その適用を行った結果、実用性と発展可能性の高さが検証されたと報告しました。また、持続可能な地域モビリティ共創のためには、変化し続ける地域社会に「適応」できるシステムが必要であり、そのためには、地域固有の課題を発見し、解決するアイデアや技術、人材、データ分析や活用のためのシステムのオープン化が大事だと述べました。

 最後に「熊本県下の地域モビリティ共創の課題と今後の研究展開研究のフリをした熊本の都市交通改革奮闘録~めざせ『車1 割削減、渋滞半減、公共交通2 倍』~」というテーマで、株式会社トラフィックブレイン太田恒平代表取締役社長が特別講演を行いました。太田氏は行動変容と交通インフラの動的制御によるスマートな都市交通基盤技術の研究開発を行っており、熊本をフィールドに研究中。熊本の交通課題として「鉄軌道が乏しい、渋滞が激しい、公共交通分担率が低い、三大都市圏鉄道と比べ国策が乏しく、都市交通計画も挫折してきた」と述べ、熊本都市圏のめざす姿として、『車1 割削減、渋滞半減、公共交通2 倍』を提言。車の分担率64%の1割(6%)が転換すれば、公共交通の分担率は6%から12%へ倍増、渋滞は半減すると試算しました。その他、バス利用者2倍増構想、運転手不足や財源問題にも触れ、データを活用し、組織・分野を横断した社会変革が必要であると締めくくりました。

※MAUMS(Multi-Agent based Uban Mobility Simulator):リアルタイム・オンデマンド・区域運行型の乗合いタクシーサービスの導入時の需要予測と評価を目的として、おもやいタクシー利用意向調査データから推定された手段転換モデルを組み込んだマルチ エージェント交通シミュレーションモデル 

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