新聞広告「まだ見ぬ君へ。」 episode.3 彼女が見たかった景色

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地元で、強くなることを決めた。

弱かったココロを変えたくて8歳から始めた空手は、いつの間にか、彼女の人生の一部になった。繰り返す怪我と戦い続けた身体はもうとっくに限界で、アスリートとしてのラストは卒業後に迎えることが決まっている。勝ちにこだわるなら、関東や関西などの強豪校に進むのが一般的だ。けれど彼女は、地元で戦う道を選んだ。クマガクに進んだことで見えてきた、“新しい景色”は何だろう。

高校生の時から優秀な結果を残していたんですね。

 高校生の時は空手で熊本県1位、九州でも2〜3位くらいの成績をおさめることができていて、空手を極めるために大学に進学する予定でした。関東・関西の強豪校も考えたのですが、高校1年生の時に負った脚の怪我の影響が大きくて。その時は、主治医の先生からも「空手はもうムリ」と言われていたほどでした。当時は脚を曲げることもできなかったんですが、必死にリハビリをして、何とか動かせる体にはなったんです。それで試合に復活できるようになると、また空手ができることが嬉しくて、オーバーワーク気味になってしまって。そしてまた手術をして…先生にも「もう次はない」と言われてしまいました。

 

それはなかなか厳しい一言ですね。

 「この状態で全国の舞台に立つのは難しいし、普通ここでみんな空手やめるよ」とも言われたのですが、やめたくなくて、ずっと続けて結果を残すことができたんです。大会後に主治医の先生に賞状とメダルを持って報告にいったら、「その脚でようやった」と先生も本当に喜んでくれましたね。

クマガクに進もうと思った理由を教えてください。

この怪我があったから地元で競技を続けるのが安心という想いと、ずっと応援してくださっている方たちに、熊本で頑張る自分の姿を近くで見てほしいという二つの想いがあって。特に、支えてくださった方々の期待に絶対応えたいという気持ちでクマガクを選びました。あとは空手を頑張りながら、自分の将来の夢につながる知識や資格を取得したいという気持ちもありました。道場やバイト先の塾の子どもたちと触れ合うなかで、いろんな悩みを抱えている子どもたちの役に立ちたい、笑顔にしてあげたいという気持ちが芽生えるようになって。スクールソーシャルワーカーをめざすようになったんです。

 

そのなかでライフ・ウェルネス学科を選んだ理由は何ですか?

ライフ・ウェルネス学科は「スポーツ」と「健康」に関するさまざまなことを学べる学科です。私自身の怪我の経験から、さらに興味が出てきた障がい者スポーツの勉強をしたり、アスリートに必要な栄養学を学んだり。もっと強くなるために、空手に取り入れられるいろんな知識を学べることができると思ったからなんです。そうすることで、空手もさらにレベルアップできるかなと。

今後の目標を教えてください

やはり関東・関西に出ないと勝てないんじゃないかという想いもあったんですが、熊本にいながらでも十分頑張ることができる。いま地元で空手を続けていることに、ひとつの後悔もないです。ただ私の空手人生はとても短くて、今でももし何かあれば、すぐにでも断たれるかもしれない。有限なんですよね。卒業のときに競技としての空手とはさよならすることが決まっているので、最後まで後悔のないように突っ走りたい。アスリートとしてやるだけやったあとは、これまで支えてくださった方の力になって、熊本の空手界の役に立てればと思っています。

PROFILE
木原 愛菜
Kihara Aina
社会福祉学部第一部ライフ・ウェルネス学科1年