新聞広告「去りゆく君へ。」 episode.5 開発者の夢

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知らなかった世界の先に 未来への鍵を見つけた。

経済学部の境章教授(当時)のゼミで惹かれた、バーチャルワールド。「見て楽しむだけでなく、自分の手でこの世界をつくりたい」と思った市川翠さんは、メタバースのプラットフォームのなかにバーチャルキャンパス「バーチャル熊本学園大学」を誕生させた。情報系の技術を専門的に学んだ経験はなかったものの、コロナ禍でひとり机に向かい、完成させた“もうひとつの世界”があった。

「バーチャル熊本学園大学」とはどのようなものですか?

ユーザーが自分の分身(アバター)をつくり、バーチャルワールドでさまざまな人とコミュニケーションがとれる「cluster(クラスター)」というメタバースプラットフォーム内に誕生したバーチャルキャンパスです。キャンパス内はもちろん、図書館や体育館など建物の中まで大学の雰囲気をリアルに再現しています。コロナ禍で大学を見学できない高校生や保護者の方、入構を制限している卒業生、地域の方々にキャンパスを体感していただくために制作しました。

 

ウェブ上にクマガクを誕生させたんですね! どういう経緯で制作を決められたんですか?

僕は高校3年生のとき、将来何になりたいかも決められてなく…何となく公務員かなと思い経済学部に進学したんです。そこから徐々に情報分野に興味が出てきて、ICTを活用した地域づくりを支援する境教授(当時)のゼミを選びました。そのゼミでバーチャルワールドの存在を知り、自分の手でデジタルコンテンツをつくってみたくなって。まずは、一番身近なクマガクからやってみようと。つくり方はほぼ独学です。学内の写真を撮り、パーツをつくって。境先生やIT企業で働いている方などにもアドバイスをしてもらいながら、少しずつワールドを組み上げていきました。

どのくらいの期間をかけられたんですか?

大学2年生の2月頃から取りかかって、3年生の6月にはゼミの発表で披露できました。ちょうど2年生になった時コロナが流行して、授業がオンラインになって、自宅にいることがほとんどになったんですよね。空いている時間をここに充てたって感じです。もちろんプログラムをつくった経験もなく、最初は戸惑いながら…という感じでしたが、やっていくうちにどんどん面白くなっていって。完成した「バーチャル熊本学園大学」は、オープンキャンパスや避難訓練の動画などさまざまな場面で活用されました。自分が開発したものが、いまも誰かの役に立っているということがとてもうれしいですね。

 

内定先も情報系を選ばれたとお聞きしました。

そうなんです。経済学科から進める将来の選択肢が、思ったより広いことに気づきました。このプロジェクトに関わったことでさらに情報系の仕事に興味がわき、地元でICTサービスを提供している会社に内定をいただきました。

学生の皆さんにメッセージをお願いします。

僕の場合は興味を持ったものに思い切って飛び込んだことで、新しい世界が開けた気がします。学生の皆さんも、気になったことは何でもやってみる、まずは自分で動いてみるという姿勢を大事にしてほしいなと思います。

PROFILE
市川 翠
Ichikawa Akira
経済学部経済学科4年